
製造業のコンプライアンスとは?違反事例や関連法令・企業が取り組むべき対策を解説
「製造業のコンプライアンスって、具体的に何を指すの?」
「自社に足りていない対策があるか確認したい」
このように悩まれていませんか?
製造業は、労働安全衛生や品質管理、環境規制など、遵守すべき法令が多岐にわたる業種です。コンプライアンス違反が発覚すると、労働災害や品質不正といった深刻な問題に発展し、企業の信頼を大きく損なうことにもなりかねません。
そこで本記事では、製造業におけるコンプライアンスの基本的な考え方から、重要とされる理由、遵守すべき主な法律について詳しく解説します。また、実際に発生した違反事例や企業が取り組むべき対策まで紹介するので、ぜひ最後までお読みください。
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製造業におけるコンプライアンスとは?

製造業におけるコンプライアンスとは、労働安全や製品の品質、環境保護などに関する法令や社会的なルールを守り、適切に事業を運営することです。法律の遵守だけでなく、企業倫理に基づいた誠実な事業活動も含まれます。
製造業では、機械操作や重量物の取り扱いによる労働災害に加え、製品の品質不良が消費者の安全に影響するリスクもあります。そのため、従業員の安全確保や品質管理など、幅広い分野でコンプライアンスの徹底が必要です。
製造業でコンプライアンスが重要な理由

なぜ製造業において、コンプライアンスを徹底することがこれほど重視されるのでしょうか。ここでは3つの理由を紹介します。
理由①|重大な労働災害が発生するリスクがあるから
製造業でコンプライアンスが重要な理由は、重大な労働災害が発生するリスクがあるためです。製造現場では、機械への巻き込まれや重量物の落下など、従業員の生命や健康に関わる事故が発生するおそれがあります。
こうした事故を防ぐには、労働安全衛生法などの法令を守り、機械の安全点検や従業員への安全教育に取り組むことが欠かせません。コンプライアンスを遵守し、安全管理を徹底することが、従業員の生命と健康を守ることにつながります。
理由②|品質不正が企業の信用低下につながるから
製造業では、品質不正による企業の信用低下を防ぐためにも、コンプライアンスの遵守が欠かせません。
例えば、品質検査データの改ざんや検査結果の偽装が発覚した場合、取引先や消費者からの信頼を失い、製品の回収や取引停止につながる可能性もあります。
こうした事態を防ぐには、検査手順の遵守や検査記録の適切な管理に加え、不正を早期に発見できる体制の整備が必要です。品質管理に関するコンプライアンスを徹底することで、品質不正の防止につながり、企業の社会的信用を守れます。
理由③|法令違反によって生産が停止するおそれがあるから
製造業では、法令違反によって生産が停止するリスクがあるため、コンプライアンスを遵守した事業運営が求められます。
例えば、環境関連法令に違反した場合、行政から施設の使用停止などを命じられる可能性があります。生産活動が停止すると、納期の遅延や取引先への供給不足が発生し、売上の減少につながりかねません。
こうした経営リスクを抑えるためにも、日頃からコンプライアンスを意識した管理体制を整え、法令違反を未然に防ぐことが大切です。
製造業で遵守すべき主な法律

製造業の事業運営には、複数の法律が関わってきます。ここでは、製造業に関わる主な5つの法律を紹介します。
労働基準法
労働基準法は、労働時間や賃金、休日など、従業員の労働条件について最低基準を定めた法律です。製造業では、交替制勤務や繁忙期の残業などが発生するため、特に労働時間の管理や割増賃金の支払いに注意する必要があります。
例えば、法定労働時間を超えて従業員を働かせる場合、原則として36協定の締結・届出が必要です。協定を結んでいても、法律で定められた時間外労働の上限を守らなければなりません。
従業員の労働時間を正確に把握し、適切な労務管理を行うことが求められます。
労働安全衛生法
労働安全衛生法は、従業員の安全と健康を守り、快適な職場環境を整えるための法律です。
製造現場では、機械への巻き込まれや重量物の落下など、重大な労働災害につながる危険があります。
こうした事故を防ぐため、事業者には機械の安全対策や従業員への安全衛生教育などが求められます。また、作業内容によっては、必要な資格を持つ従業員に作業を担当させなければなりません。
労働災害を防止するには、法律で定められた安全対策を講じ、現場の危険を継続的に確認することが大切です。
労働者派遣法
労働者派遣法は、労働者派遣事業の適正な運営や、派遣労働者の保護などについて定めた法律です。
製造業では、外部人材を活用する際に、労働者派遣と業務請負の違いを理解しておく必要があります。両者は、従業員に対して誰が業務上の指示を出すのかという点で異なるためです。
例えば、業務請負契約を結んでいても、発注企業が請負会社の従業員に直接作業を指示している場合、実態によっては「偽装請負」と判断されるおそれがあります。そのため、契約内容だけでなく、実際の指揮命令関係も確認し、適切な運用を徹底しなければなりません。
製造物責任法(PL法)
製造物責任法(PL法)は、製品の欠陥によって人の生命や身体、製品以外の財産に損害が生じた場合に、製造業者などの損害賠償責任を定めた法律です。例えば、製造した家電製品の欠陥が原因で火災が発生し、住宅に被害が及んだ場合、製造業者が損害賠償責任を負う可能性があります。
こうした事故を防ぐには、製造工程での品質管理や出荷前の安全性確認が欠かせません。
なお、製品に欠陥があっても、損害がその製品自体にとどまる場合は、原則としてPL法の対象外です。
環境関連法令
製造業では、工場から排出されるガスや排水、製造工程で発生する廃棄物などについても、法律に基づいた管理が必要です。主な環境関連法令には、次のようなものがあります。
例えば、工場の排水に規制対象の有害物質が含まれている場合、適用される排水基準を守らなければなりません。また、産業廃棄物の処理を外部業者に委託する場合も、委託先の許可の確認や、マニフェストによる処理状況の管理などが求められます。
製造業で発生したコンプライアンス違反の事例

ここでは、実際に公表されている製造業のコンプライアンス違反の事例を3つ紹介します。
事例①|安全管理の不備による労働災害
静岡労働局は、製紙工場で発生した死亡事故について、労働安全衛生法違反の疑いで送検した事例を公表しています。
この事故では、機械を停止させずにロール機の清掃作業を行わせた疑いがあります。清掃中の労働者は、機械のロール部分に巻き込まれて死亡しました。
また、静岡労働局によると、2024年度に送検した26件のうち、19件は重大な労働災害をきっかけとした事件でした。この事例からも、機械の停止などの基本的な安全対策を徹底し、労働災害を未然に防ぐことが求められます。
事例②|偽装請負による労働者派遣法違反
愛知労働局は2014年度、製造業務請負事業者1社を偽装請負の疑いで警察に告発しています。問題となったのは、必要な届出をせずに、製造業務で労働者派遣事業を行っていた疑いがある点です。
請負契約を結んでいても、実際の業務運用によっては労働者派遣に該当するおそれがあります。製造業で業務請負を活用する際は、契約内容と実際の指揮命令関係が一致しているかを確認する必要があります。
参照:愛知労働局「平成26年度労働者派遣事業等指導監督状況」
事例③|品質検査データの改ざん・認証試験の不正
2024年6月、国土交通省は、自動車メーカー5社から型式指定申請に関する不正行為の報告があったと公表しました。
具体的には、歩行者保護試験での虚偽データの提出や、衝突試験に使用する車両の不正加工などです。騒音試験やブレーキの性能を確認する試験でも、虚偽記載などが報告されています。
国土交通省は、現行生産車に不正があった3社に対して、対象車種の出荷停止を指示しています。また、不正を報告した5社への立入検査を行う方針も発表しています。
製造業では、検査データの改ざんなどが発覚すると、製品の出荷停止や企業の信用低下につながりかねません。こうした事態を防ぐには、検査手順の遵守や検査データの適切な管理が必要です。
参照:国土交通省「型式指定申請における不正行為の有無等に関する自動車メーカー等の調査報告の結果等について」
製造業が取り組むべきコンプライアンス対策

ここからは、コンプライアンス違反を防ぐために、製造業の企業が取り組むべき5つの対策を紹介します。
対策①|コンプライアンスに関する社内規程を整備する
製造業でコンプライアンス違反を防ぐには、従業員が守るべきルールを社内規程として明確にすることが大切です。社内規程が整備されていれば、従業員ごとの判断のばらつきを抑え、統一された基準で業務を進めやすくなります。
例えば、労働時間の管理方法や機械の安全点検、品質検査の手順などを具体的に定めます。あわせて、規程に違反する行為が発覚した場合の報告先や対応手順も決めておきましょう。
ただし、規程を作成するだけでは十分ではありません。法改正や製造工程の変更に合わせて内容を見直し、現場で守られているか定期的に確認することも必要です。
対策②|従業員への教育・研修を実施する
コンプライアンス違反を防ぐためには、従業員への継続的な教育・研修も必要です。社内規程を整備していても、従業員がルールを理解していなければ、意図しない法令違反や事故につながるおそれがあります。
製造業では、業務内容に応じて、以下のような教育・研修を取り入れるとよいでしょう。
労働安全衛生法や社内規程に関する研修
機械設備の正しい操作方法や危険作業に関する安全教育
品質検査の手順や検査データの適切な管理方法
特に、新入社員や配置転換した従業員には、担当業務に応じた教育が求められます。また、一度研修を実施して終わりにせず、定期的に内容を振り返ることも大切です。
対策③|製造現場の安全・品質管理を徹底する
労働災害や品質不正を防ぐには、製造現場における安全管理と品質管理の強化が必要です。
安全対策や品質管理のルールを定めていても、現場で守られていなければ、重大な事故や不良品の発生につながるためです。
例えば、安全管理では、機械設備の定期点検や危険箇所の確認、作業手順の見直しなどに取り組みます。危険な作業については、必要な資格や教育を受けた従業員が担当しているかも確認しましょう。
一方、品質管理では、検査手順の標準化や検査記録の適切な保存などが挙げられます。検査結果の改ざんを防ぐため、記録の確認方法や承認手順を明確にしておくことも有効です。
対策④|内部監査や相談窓口を設置する
コンプライアンス違反を早期に発見するためには、内部監査の実施や相談窓口の設置が有効です。製造現場で不正や法令違反が発生しても、問題が報告されなければ、発見が遅れて被害が拡大するおそれがあるためです。
内部監査では、労働時間の管理や安全対策、品質検査などが社内規程に沿って行われているかを確認します。
また、従業員が不正や法令違反を発見した際に、安心して報告できる相談窓口も設けましょう。匿名で相談できる仕組みや、相談内容の秘密を守る体制を整えることが大切です。
なお、公益通報者保護法では、一定規模を超える事業者に内部公益通報への対応体制の整備が義務付けられています。相談窓口を設置するだけでなく、通報内容の調査や問題の是正まで対応できる体制を整えましょう。
対策⑤|取引先・サプライヤーの管理を強化する
製造業では、取引先や製造業務の委託先も含めたコンプライアンス対策が欠かせません。取引先で品質不正や法令違反が発生すると、自社の生産活動や信用にも影響するためです。
取引先や委託先を選定する際は、以下の項目を確認しましょう。
法令違反や行政処分の履歴
品質管理や安全衛生管理の体制
従業員の労働環境や労務管理の状況
製造業務を委託する場合の指揮命令体制
契約後も定期的に取引先の管理状況を確認し、問題が見つかった場合は改善を求めることが必要です。
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まとめ

製造業では、労働安全や品質管理、環境保護など、幅広い分野でコンプライアンスの遵守が求められます。法令違反は、労働災害や企業の信用低下、生産停止などにつながるおそれがあるため、注意が必要です。
こうしたリスクを防ぐには、社内規程の整備や従業員教育に加え、製造現場の安全・品質管理などに取り組むことが大切です。継続的に管理体制を見直し、法令違反を未然に防ぎましょう。
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